糖尿病の人がインプラントを受ける際に注意すること
インプラント治療では、インプラントを歯茎と骨に埋め込むという外科手術が避けられません。そのため、持病があるなど、体の状態が良くない場合には特に注意を要したり、場合によっては治療そのものが受けられなかったりすることもあります。
糖尿病もインプラントの際には注意が必要な病気で、きちんとコントロールがなされていない糖尿病の場合、インプラント手術を受けられないこともあります。
今回は糖尿病の人がインプラントを受ける際に注意することをご紹介していきます。
糖尿病とは

糖尿病というのは、インシュリンというホルモンの分泌が少なくなる、もしくは働きが悪くなることで、糖を分解できずに血糖値が異常に上昇し、様々な合併症を引き起こす病気です。日本人はもともと遺伝的にインシュリンの分泌が弱い人が多く、最近では生活習慣の悪化などにより、若い世代でも発症する人が増えています。
糖尿病の人はインプラントがうまくいきにくい
まず知っておきたいこととして、糖尿病の人はインプラント周囲の感染を起こす「インプラント周囲炎」にかかりやすく、インプラントが失敗に終わるリスクがある、ということがあります。
糖尿病で血糖値が高い状態が続くと、体のすみずみに酸素を運ぶことができず、免疫が低下し、感染症にかかりやすくなります。そうすると、口内でも感染症が起こりやすくなります。
また、高血糖の状態は歯茎の血管を弱らせ、歯茎の状態の悪化、治癒の悪化を起こします。
それに加え、糖尿病になると口の中が乾き、自浄作用が落ちて口内細菌が繁殖しやすい状態になるため、糖尿病の人はインプラントを埋めたとしても、インプラント周囲に感染を起こすリスクが通常よりも高くなってしまうのです。
糖尿病の人がインプラント可能となる基準
糖尿病の人がインプラントに対してリスクがあるとはいえ、糖尿病の人皆そろってインプラントを受けられない、というわけではありません。糖尿病であっても、病状が軽度で、血糖値のコントロールがされている状況であれば、インプラント治療を受けることは可能です。
糖尿病の人がインプラントを受けられる基準として、厚生労働省の歯科インプラント治療指針には以下のように記載されています。
糖尿病の人がインプラントを受けられる基準として、厚生労働省の歯科インプラント治療指針には以下のように記載されています。
・他の臓器に重篤な合併症を起こしていないこと
・HbA1c(ヘモグロビンエイワンシー:過去1ヶ月の平均的な血糖値)が6.9以下 であること
・空腹時の血糖値が140mg/dl 以下であること
・尿ケトン体が(—)であること
この基準をクリアしていれば、通常はインプラント治療を受けても大丈夫だと考えてよいでしょう。
ただし、インプラント治療というのは、インプラントを埋めたらそれで終わり、ということではなく、そこからも継続して血糖値を安定させ続け、長くインプラントを安定させていくことが大事です。
糖尿病の人がインプラント治療に際して注意すること
糖尿病でインプラント治療を検討中の方は次のことに気を付けましょう。
◆糖尿病であることを必ず歯科医師に伝える
糖尿病の人は、現在の血糖値や、どのような治療を受けているのか、といったことを忘れずに、できるだけ正確に担当歯科医師に伝えましょう。
◆口内の清潔を保つ
糖尿病の人は感染リスクが高いため、常に口内の清潔を保つように心がけましょう。
◆手術当日のインシュリン注射、内服薬についてあらかじめ担当医に確認しておく
インプラントの手術後は、痛みや腫れが出るため、食事が摂りにくくなります。このような場合に、いつものように決まった時間に内服薬を飲んだり、自己注射を打ったりしてしまうと、血糖値が下がり過ぎて、低血糖発作を起こす恐れがあります。そのため、事前に内科の担当医に、服用薬の対処について確認しておきましょう。